PAOの原材料から合成までの過程
PAOとは、Poly Alpha Olefin、ポリアルファオレフィンの略である。
潤滑油の基油分類では、API基油分類のグループ4に該当する。
私の分類では、PAOは本来の意味での化学合成油である。
なぜなら、PAOは原油由来の潤滑油留分を単に精製したものではないからである。
PAOは、ナフサや天然ガス由来の軽質炭化水素を出発点に、エチレン、αオレフィンを経て、重合反応によって目的の分子を作る。
つまり、原料の出発点が石油や天然ガスであっても、製造工程としては鉱物油とは根本的に異なる。
PAOは、原油を精製した油ではなく、炭化水素分子を組み立てて作る合成炭化水素である。
出発点が石油や天然ガスであっても、製造工程がまったく違う。
グループ3は、原油由来の重質留分やワックスを高度水素化処理・異性化した高度水素化鉱物油である。
一方、PAOは、ナフサや天然ガス由来の軽質炭化水素からエチレンを作り、エチレンからαオレフィンを作り、そのαオレフィンを重合して作る合成炭化水素である。
つまり、グループ3は「改質」であり、PAOは「合成」である。
ここが決定的に違う。
PAOは、目的の分子構造を狙って作ることができる。
そのため、低温流動性、酸化安定性、蒸発損失、熱安定性、分子構造の均一性に優れる。
ただし、PAOにも弱点はある。
極性が低く、添加剤溶解性や金属表面への吸着性ではエステルに劣る。
だから、高性能オイルではPAOにエステルやアルキルナフタレンなどを組み合わせることが多い。
PAOは万能ではない。
しかし、グループ3高度水素化鉱物油とは成り立ちが違う。
だから私は、PAOを本来の化学合成油として評価する。
PAOは、ナフサや天然ガス由来の軽質炭化水素からエチレンを作り、エチレンをオリゴマー化して1-デセンや1-ドデセンなどの直鎖αオレフィンを作り、そのαオレフィンをさらにオリゴマー化して、蒸留・水素化仕上げを行うことで得られる合成炭化水素基油である。
PAOは、原油をきれいにした油ではない。
エチレンからαオレフィンを作り、それを重合して作る合成炭化水素である。
だから、PAOはグループ4であり、本来の化学合成油である。
1 エタンからエチレン
C2H6 → C2H4 + H2
2 エチレンから1-デセン
5 C2H4 → C10H20
3 1-デセンのオリゴマー化
m C10H20 → C10mH20m
4 水素化仕上げ
C10mH20m + H2 → C10mH20m+2
5 全体式
5m C2H4 + H2 → C10mH20m+2
例:1-デセン三量体
15 C2H4 + H2 → C30H62
例:1-デセン四量体
20 C2H4 + H2 → C40H82
PAOは、エチレンからαオレフィンを作り、そのαオレフィンをオリゴマー化し、最後に水素化して作る合成炭化水素である。
1-デセンを例にすれば、まずエチレン5分子から1-デセンを作る。
5 C2H4 → C10H20
次に、1-デセンを3分子または4分子つなげる。
3 C10H20 → C30H60
4 C10H20 → C40H80
最後に、残った二重結合を水素化して飽和炭化水素にする。
C30H60 + H2 → C30H62
C40H80 + H2 → C40H82
これが、1-デセン由来PAOの基本的な考え方である。
実際のPAOは、三量体、四量体、五量体などが混ざった基油であり、蒸留・分別によって目的の粘度グレードに調整される。
つまり、PAOは自然に存在する潤滑油留分ではなく、分子を組み立てて作る合成炭化水素である。
だからPAOはグループ4であり、本来の化学合成油である。
1 極性が低い
2 金属表面への吸着性がエステルより弱い
3 添加剤の溶解性が弱い場合がある
4 シール材への影響を考慮する必要がある
5 単体ではエステルほどの油膜保持性を期待しにくい
6 価格が高い
7 配合設計が難しい
つまり、PAOは非常に優秀な基油だが、万能ではない。
PAOは安定性、低温性、蒸発損失の少なさに優れる。
しかし、潤滑性、金属吸着性、添加剤溶解性ではエステルの助けを借りる意味がある。
だから、高性能オイルではPAO+エステルという設計が理にかなう。
グループ3は、原油由来の重質留分を高度に改質した油である。
PAOは、エチレンからαオレフィンを作り、それをオリゴマー化して作る合成炭化水素である。
グループ3は改質。
PAOは合成。
この違いは大きい。